-prologue- -ある男達の日常。-

ここは草原、大きな岩場もあるが。ジステンという街から、半日の場所。
「ユーキ! ブレスが来る! 隠れろ! 」
あわてて岩場に身を隠す、ブレスによって半分ほど崩壊する岩場。

「ソル、お前本当にこんなやつ何度も倒しているのか? 」
30歳位だろうか、あごひげの似合う男、結城は問う。
「ある! しかしこいつ妙にでかい、今まで倒してきた1,5倍位の大きさだ! 」
現在相手にしている敵は、飛竜ワイバーン。下位クラスのドラゴン種族。
「ユーキ、あんた背中に背負ってるもの忘れてないか? 」
あわてて背中を岩から離す。

-半日前-冒険者ギルドにて。
「お、こいつなんていいんじゃないか? 」
「ワイバーン? なんだそれ」
想像するに大きな鳥なんだろうか?
「普段はこの国にはいないものなんだが、なぜか迷い込んだらしいな。あんたの腕試しにはいいかもしれない」
澄んだ女性の声。
「ソルさん。あなたは何度も倒してるではありませんか。でもユーキさんには辛い気もしますが」
「だから腕試し、このおっさんの成長具合を見るのにちょうどいい相手、・・・報酬もいいしな」
ギルドのお姉さん曰く、俺以上、ソル以下らしい。ソルは話を進める。
「この仕事だれも受けてないよな? 早速だが契約させてもらう」

「はい、今日張り出されたもので、一般人にはほとんど手に負えない代物なので、まだ未契約ですね」
「ユーキどうするよ? 2人かかりだとかなり楽な相手だぞ? 」
茶髪の青年はそういうが、この男の楽は、決して楽ではない気がする、彼との一ヶ月間の生活でわかったこと。だが、
「OK、ソルが倒してくれて金が手に入るのなら、俺としては願ったりかなったりだな」

「では、契約成立ということで。こちらが支給品となります」
渡されたのはMAP、それから変わった形のハンマー3本。ソルが言う。
「これ、ヒートハンマーか? この国には無いものとばっかり思ってた」
「一般人でもモンスターを倒せる可能性のある武器なので最近は仕入れてますよ」

お姉さん曰く、強くたたきつけると大爆発を起こす対モンスター用兵器だそうだ。
「後、それから馬車を用意させてます、、この竜が村を襲うとしたら惨事が起こりますからね、出来うる限り移動をはじめていない今のうちに倒してください。証拠は尻尾、羽、首、そのほかの証人のどれかを持ち込んでいただければお支払いいたします」

で、馬車を途中に隠して、目的地に到着したのが10分前、
「あれ、楽なのか? 今まで倒してきた奴となんか風貌が違いすぎるぞ。
「まぁユーキが今まで倒して敵の10倍位の強さはあらぁな」
おぃ。ソルが続ける。
「まだ気がついてないから、先に作戦会議だ、投擲技術は高いほうか? 」
「多分人並みよりはましだとおもうが」
「・・・なんにせよ止めを刺すのは俺だから、あんたがヒートハンマーを全部持っててくれ」
さらに続ける。

「あの低脳竜の攻撃パターンは4パターン、ひっかき、突っつき、尻尾アタック、そしてファイアブレスだ魔法は使えない、さらに言うなら各種攻撃に必ず予備動作がある」
結城は想像するのも嫌な現実を口にする。
「俺がその攻撃を食らって跳ね飛ばされて岩なんかに激突した場合」
「そう、ヒートハンマーが誘爆して、あんたは粉々、ミンチより酷いだろうな」
「俺のその時点での生き返れる可能性は? 」
「知り合いの刻印者から聞いた話しだと7割らしい。まぁとにかく避けろ、おとりは俺がやる」
そしてソルが飛び出す。俺も後ろからついていく。それがが10分前、話は現在に戻る。

「で、どうするんだ」
ユーキと呼ばれる男がぼやく。
「倒せない相手じゃない。そしてヒートハンマーをくれた姉さんに感謝しないとな、かなり楽になった」
ワイバーンを見やる、予備動作、ファイアブレスと見た、この岩を吹き飛ばすつもりだろう。実際後一発程度で破壊される。
「やはりおとりは俺がやる、あんたは隙を突いてヒートハンマーを力いっぱい投げつけろ」
「投げつける場所は? 」
「頭、背中以外なら、翼もだめか、弱くはなるんだが、俺が止めをさせるのは胴体部分だけだ」
「かなりピンポイントだな。」
「自身無いか? 」
「いや問題ない、お前がおとりになってくれる以上俺がその役を買って出るのは当然だ」
結城が続ける
「ところで眠りの雲なんかの俺が使える魔法はどうなんだ? 」
「成長してるのか? 」
半眼になってソルが冷たく言う。
「すこしだけ。解釈がわかった」
「OK、だがだめだ、あんたの詠唱は多分まだ遅い。さらに過去の経験でいうなら、あんたのスリープクラウドで俺が万が一眠った場合、それは永眠になるはずだ」
ファイアブレス2秒前
「時間も無い、いくぞ! 」
ソルと結城が岩から飛び出す、吹き飛ぶ岩。

「ソニックブラスト!! 」
ソル曰く音速の衝撃破を出すソルの必殺技。的が大きい、動きが鈍重なこのワイバーンは被弾するが、ほぼ無傷、だがターゲットが完全にソルになる。
「頼んだぞ! ユーキ」
ユーキは背中に背負っているヒートハンマーを一本を取り出す。
遠距離からの投擲には自身が無い、威力も落ちて不発の可能性もある。
「ったく、一ヶ月前とは人生が違いすぎるぞ! 」
愚痴りつつワイバーンの横にまわる、気がついているようだが、前方にいる傷をつけた男に執着しているらしい。

結城は突撃する。ソルよりも近接し、すべりこみつつ一発目の投擲、
炸裂、胴体と翼の部分に着弾。
「ナイスだ!でもまだ浅い、後2発は胴体を狙ってくれ! ソニックブラスト!! 」
結城にもターゲットがついたようだ、必死になって尻尾を避けるユーキ。何とか2本目を取り出す。

「死ぬ、死ぬ! 」
「あんたの刻印は7割で復活だから安心しとけ! 俺のは5割だ! ソニックブラスト!! 」
「そんな気楽に死ねるか! 阿呆!」

2度目の投擲、尻尾が迫る!尻尾攻撃と投擲が同時に行われた。胴体に命中、爆発に巻き込まれなかったのが不幸中の幸いか。ソルの元まで吹き飛ばされる結城。
「ユーキ! 」
「・・・生きてる。誘爆もしなかったようだ」
もがく飛竜、
「あんたはいい仕事をしてくれた、あれだけ装甲が剥げているなら、もうヒートハンマーはいらない、止めを刺すからあんたは下がれ! 」
「・・・まかせた」
ソルが叫ぶ。
「正義の刻印! 力を貸せ!」
銀に光だす、右の手の甲についた何かのエンブレム。そして詠唱。
「善なる力、風の精霊、疾風の嵐! 全ての敵を打ち砕け! 」
「ソニックブラスト!!! 」
三本の音の波、その全てワイバーンに直撃する。曰く彼の75%の力らしい詠唱

直撃したワイバーンは生き絶える。
「勝ったのか・・・? 」
「ああ、大勝利だ、あまったヒートハンマーを換金して、賞金もらえばいい武器かえるぜ? 」
「とりあえず馬車に戻らないか、俺は腰が痛い。」
「おっさんだなぁ。だがまぁ、あれだけ叩きつけられたら無理もないか。だが一応証拠もちかえらないとだからな。先に戻っててくれ。野良オークなんぞに負けるなよ? 」
「いまさら負けてたまるか。それに飛竜のせいで周りには何もいないようだし」

一ヶ月前とは違う日常、転機の訪れてしまった彼の人生、全ては一ヶ月前の事件から始まる事になる。

一話へ続く。